派遣について勉強している楓ちゃんですが、『3年ルール』や『抵触日』の意味が、いまいち分かりません。
この記事では、「派遣の3年ルールとは?」「抵触日とは?」「個人単位と事業所単位の抵触日の違い」について、一緒に見ていきましょう。
「抵触日」がきたら派遣社員はどうなるのか?抵触日のリセット「クーリング期間」などについても解説します。
抵触日とは?
なんのことだろ?
抵触日の3年ルール派遣社員には、最大3年間の期間制限が設けられている。
例えば4月1日から派遣された人は、3年後の4月1日が抵触日にあたる。
抵触日に派遣されててはダメだから、3月31日には派遣を終了しないといけないんだ。
もちろん別の派遣先なら問題ないし、同じ企業でも別の組織なら問題ない。
同企業の同組織には、最大3年までしか働けないってことだよ。
昔から上限3年までという考え方はあったけど、専門28業務では設けられていなかったんだ。
ただ「派遣は長い期間やるものではない。あくまで正規雇用へのつなぎ」というのが世の中の考えだから、それに従って2015年の法改正で専門28業務を廃止し、自由化業務と一本化したんだ。
つまり今まで専門28業務だった仕事も、3年ルールの法律が適用されるようになったんだ。
もし同じ職場に3年以上も派遣されているのなら、派遣先にとって必要な人材でしょ?じゃあ本来は正社員にしたり、直接雇用が結ばれるべきだよね?
そういった意味もこめて、3年の上限が設けられているんだ。派遣労働者が安定して働けるようにこの法律があるんだよ。
個人単位と事業所単位の抵触日
「個人単位での3年」は、同じ人を同一の組織単位で3年以上継続して雇ってはいけないというルール。
つまり楓ちゃんが2017年4月1日に「A社の総務課」に派遣した場合、3年後の2020年4月1日が「個人の抵触日」にあたり、この日から「A社の総務課」では働けない。
「B社」や、「A社の人事課」でなら働けるよ。あくまで同一組織でなければ問題ないんだ。
事業所単位の3年ルール
「事業所単位での3年」は、事業所が3年以上継続して派遣を雇ってはいけないというルール。
さとる君が2017年4月1日に「C社の大阪工場」という事業所に派遣された場合、3年後の2020年4月1日が事業所の抵触日にあたる。
この日から「C社の大阪工場」では、一切派遣利用ができなくなるんだ。
個人単位と違って事業所単位だから、さとる君だけでなく、今まで「C社の大阪工場」で働いたことがない楓ちゃんも働けないよ。
また、この事業所単位は合算だから、さとる君が1年半「C社の大阪工場」で働き、翌日から楓ちゃんが「C社の大阪工場」で1年半働いても合計3年となり、抵触日を迎えるから派遣は利用できなくなるんだ。
ちなみに「事業所」の範囲は「雇用保険の単位」とされているんだ。
事業所は雇用保健の単位で決定
なにをもって「事業所」とするかは、雇用保険の単位によって決められるんだ。
雇用保健は会社で一括して加入しているように見えるけど、実は事業所ごとに分割されている。すなわち、それを基準に同事業所か、別事業所か判断するんだね。
大きい会社の大きい工場だと、会社の組織上「**事業所」と名称が分かれている場合もある。ただ雇用保険適用事業所としての単位は、実は同じ事業所ってことがあるんだ。
この場合、同一事業所としてみなされるから注意が必要だね。
効力は「事業所単位>個人単位」
だから派遣会社は前もって労働者に事業所の抵触日を伝えておく必要があるんだよ。
60歳以上と無期雇用は例外
抵触日の延長
さっきの図の「例外あり」の部分だね。
過半数労働組合に対しての意見聴取抵触日の1ヶ月前までに、意見聴取を行い、過半数以上の同意が得られれば、同じ事業所でも3年を超えて派遣を利用できるんだ。
この延長に関しては回数制限はないから、事実上は何度でも可能だよ。
実は従業員の同意が取れずに、やむを得ず派遣利用を中止するというケースは少ないから、3年以上継続しているのがほとんどなんだ。
派遣の抵触日のリセット クーリング期間とは
じゃあ「個人単位」で3年経った場合は、2度と同じ会社の同じ組織では派遣できないんだな?
これは個人単位でも事業所単位でもOKで、この3ヶ月の期間をクーリング期間と呼ぶんだよ。
そんなに早くですか?
クーリング期間の悪用法律では、3ヶ月経ったら再び派遣の利用が可能とされている。
つまり派遣会社・派遣先からすれば、正当な権利の行使として派遣の抵触日のリセットを行えるんだ。
ただ本来この抵触日の法律の趣旨は、「派遣よりも正規雇用を増やすため」だったよね?
3ヶ月期間をおいて再び派遣雇用するのは、法律には反していないけど法の趣旨には反しているから、厚生労働省や世間の論調から見ると問題なんだ。
たちの悪い派遣会社が、法の抜け穴として「3年派遣」→「3ヶ月休み」→「3年派遣」と繰り返すことも考えられる。こうなると派遣社員はずっと不安定なままだし、なんのための法律か分からない。
だから法律上は認められているけど、脱法行為であるし法を悪用しているとも言えるんだ。
これを承知で派遣先企業が行使を続けると、当然世間からの声も厳しくなる。新聞やマスコミで取り上げられれば、企業としてマイナス効果にもなりかねない。
だから表立ってやる会社は多くないよ。派遣労働者にとっても「クーリング期間はないもの」くらいに考えておいた方がいいかもね。
派遣の抵触日がきたらどうなる
直接雇用は正社員とは限らない・「意見聴取やクーリング期間を経ての派遣延長」
・「同社の別事業所や別組織で働く」
・「辞める(別の派遣先へ変える)」
・「派遣先企業と直接雇用契約を結ぶ」
抵触日がきたら、この4つのパターンだね。
企業からすれば、優秀な人材には働き続けてほしいから直接雇用もありえるよ。
今後はこのような流れも多くなると言われているんだ。詳しくは派遣途中での直接雇用、満了後の直接雇用。紹介予定への切り替えも参考にしてみてね。
ただし、直接雇用は必ずしも正社員ではないことは頭に入れておこう。
パートや契約社員も直接雇用に含まれるから、契約を打診された場合は雇用条件をしっかり確認することが大切だね。
てかさ、3年経ってもほっといたらバレねーんじゃねーの?
役所もすべての派遣先を管理できてないから、抵触日を過ぎた瞬間に注意を受けることも実際はほとんどない。
ただ後からそれが判明すると、「派遣社員を正規雇用しなければならない」など指導が下されるよ
大手ではこのようなことはないから心配する必要はないよ。派遣会社を選ぶ際は必ず大手を利用しよう。