「同じ仕事をしているのなら正社員と同じ給与・待遇にすべき」という法律が、2020年から適用されると知った楓ちゃん。
では2020年から、派遣も正社員と同じ待遇になるのでしょうか?ここでは「同一労働同一賃金とは何か?」について一緒に見ていきましょう。
「派遣社員の同一労働同一賃金のメリットとデメリット」「同一労働同一賃金が適用された後の派遣の動向」について分かりやすく解説いたします。
同一労働同一賃金は正社員と非正規社員の待遇を一緒にする試み
え!?なにこれ?こんな法律できたの?
同一労働同一賃金とは『同一労働同一賃金』とは、2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」という長い名前の法律に記載されているもので、2020年4月1日から効力が発生するとされているんだ。
名前の通り、同じ仕事をしているのであれば正社員だろうがパート社員だろうが派遣社員だろうが同じ給与・待遇にすべき。という法律だよ。(「待遇」とは、各種手当・福利厚生のことを指す)
法律の趣旨通りに取ると、正社員と全く同じ仕事をしながら、雇用形態が違うという理由だけで、正社員より低い待遇で働いているのはおかしい。その人達の待遇を正社員と同等に上げようということだね。
これは、不当に低い待遇で働いている非正規社員の待遇を上げることを目的としているんだ。もちろん、能力差がある場合の格差は問題ないよ。
派遣先と派遣会社での同一労働・同一賃金
今の所「派遣元に合わす」のと「派遣先に合わす」2種類の同一労働同一賃金があるんだ。
派遣先と派遣会社どちらに合わす?契約社員やパートは正社員に待遇を合わせればいいから話は早いけど、派遣の場合は就業しているのは派遣先で、雇用関係ににあるのは派遣会社だから、どちらに基準を置くかの判断が難しく、現在も議論されているんだ。
2019年1月時点では「①派遣先の労働者との均等・均衡方式」と「②労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」の2種類が用意されていて、派遣会社や派遣スタッフに委ねられているんだ。(厚生労働省の同一労働同一賃金に関する法整備について)
①派遣先の労働者との均等・均衡方式
「①派遣先の労働者との均等・均衡方式」は派遣先の正社員と待遇を比べて賃金を決定する方法。
ただしこの場合、全ての賃金は派遣先次第になるから、どの派遣会社から派遣されても同じ給与となる。
また以前は時給1300円だったのに、次の職場では1200円となる可能性もあり、スキル自体は上がっている筈なのに賃金が下がるということも起こってしまう。
これは2015年の派遣法で改正された派遣のキャリアアップ措置と矛盾するんだ。
②労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式
「②労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」は、派遣会社の方で「事務職は○○円」「営業は○○円」と決める方式。
これは一定の条件(十分に派遣社員の保護が認められていると判断できる条件)を満たした場合、派遣会社が派遣社員の代表者と話し合い労使協定を結べば適用できるんだ。
一定の条件には「同種の一般労働者の平均を下回らないこと」や「派遣会社の正規労働者と比較しても不合理でない」こと等が盛り込まれているよ。
ただこの方式だと、同じ就業先でも派遣会社によって給与は変わるので同一労働同一賃金に矛盾することには変わりないね。
派遣やパート労働に与える影響は?
派遣社員からしたら、ありがたい法律じゃねーか
同一労働に該当しないこの法律によって待遇が上がるケースは少ないとも予想されているんだ。
なぜなら、法の施法に備えて、企業では「正社員と派遣社員の仕事の違いの明確化」を行うと予想される。つまり正社員と派遣社員が「同一労働」をする状況は、ほぼ発生しないことになるんだ。
例えば、派遣社員と正社員が同じ職場で事務の仕事をしている場合、
・派遣社員の業務:電話応対、PCでの書類作成
・正社員の業務:電話応対、PCでの書類作成、経理伝票の作成、上司へのレポート作成
というように、「正社員は派遣社員より業務が多い、あるいは難易度の高い業務をしているので、同一労働ではない(=待遇に差があってしかるべき)」と言えるように体制つくりをすると予想されるんだ。
「同一労働」と言えるような状態は発生しない可能性が高いんだね。
派遣スタッフに同一労働・同一賃金はメリットが無いのか?
同一労働同一賃金のメリットこの法律には「同一労働」でなかったとしても、「労働の内容に関係のない待遇は同一にすべき」という内容が含まれているんだ。
これはどういったものを指すかというと「福利厚生施設」や「交通費」などが対象になるということだね。
つまり食堂・体育館などの社内の施設について、「正社員のみが利用できる」とされていても、同一労働同一賃金法律の施法後は派遣社員にも開放される見通しだね。
この点はメリットの1つ。
交通費などの手当てについては、どこまでが派遣社員に支給される手当とみなされるかは、まだわからないのが現状。
ただ過去に「正社員が定年後に契約社員として再雇用された時に交通費の支給が無くなるのは違法である」という判例もあるから、交通費は派遣社員にもおそらく支給対象になると予想されているね。
(一方で、「正社員は転勤の可能性があるので住居手当が支払われるが、定年後再雇用の契約社員には転勤の可能性が無いので、住居手当が無いことは合理的である」と判断もされているけどね)
予想されるデメリットは?
デメリット1
正社員と派遣社員の仕事の差が少ない職場では、スキルアップのチャンスというメリットが今まであったんだ。
派遣社員であっても正社員と同じ仕事をするのは、「派遣社員にも関わらず負担が大きい」という見方もあるけど、一方でより難易度の高い仕事にトライすることでスキルを上げ、正社員への登用や、あるいは他社に正社員として転職するきっかけにすることができたんだ。
ただ同一労働とみなされることを防ぐため、業務内容が明確に分かれてしまうと、このチャンスが失われることになるんだ。
デメリット2
例えば月間160時間(8時間×20日)の仕事で交通費が16,000円/月の場合、従来「時給1500円」だった仕事が「時給1400円+交通費」に変わる可能性があるんだ。
100円×160時間=16,000円になるので、交通費が支給されるといってももらえる額は変わらないことになるね。
また、残業が発生すると、従来は 1,500円×残業時間 だったものが 1,400円×残業時間となるので、損をしてしまうことにもなるね。
すでに勤めている派遣先の時給が減ることは少ないけど、新しく始める場合は注意が必要だね。
デメリット3
企業にとって、手当の支給が必要になり、さらには「同一労働」とみなされることによって正社員と同等の待遇を保証しなければならなくなるリスクなどを考えると、企業が派遣社員を利用するメリットが少なくなってしまう。
かといって正社員を増やすという選択を取る企業は少ない。
つまり「システムによる自動化」「アウトソーシング化」を取る企業が多いと予想されるんだ。
従来派遣社員が担当していた業務が置き換わり、派遣社員が削減される結果になってしまう可能性もあるんだよ。
今後の動向に注目していこう!